評価 | 10/10 |
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個人的好みだけでいえば☆11!
設計者の安全性感覚を疑うほどぶっ飛んだデザインのユニークなアトラクション、ヴィンセント・デュトレ氏のステキなステキなアートワークがジェットコースターのように気分を盛り上げてくれつつ、一方ではボスに急き立てられながら遊園地を作るカツカツでシビアな展開に唸る!
重いゲームに抵抗がない人にとっては「軽くてサクッと遊べる中量級」、初心者には「『カツカツな展開を楽しめるかどうか』が分かれ目となる中量級入口」です。最近好みにぶっ刺さって、しばらく抜けなそうな雰囲気むんむんのホットな状態でのレビューになりますのでご注意ください。
テンペニーパークの基本情報
※基本情報を隠す
タイトル | テンペニーパーク(Tenpenny Parks) |
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テーマ | 遊園地、建設 |
メインメカニクス | ワーカープレイスメント タイル配置 |
参加人数 | 1~4人 |
プレイ時間 | 45分~75分 |
BGGランキング | 総合1,770位 |
BGGウェイト | Weight: 2.14 / 5 (Medium Light) |
対象年齢 | 14歳から |
発売時期 | 2022年~ |
ゲームデザイン | ネイト・リンハルト(Nate Linhart) |
アートワーク | ヴィンセント・デュトレ(Vincent Dutrait) |
関連企業/団体 | サンダーワークスゲームズ(Thunderworks Games) |
拡張版情報 | Tenpenny Parks: Fast Pass Mini Expansion (ミニ拡張。日本語版なし) |
プレイ概要
テンペニー市長から「遊園地を5カ月で完成させて、さびれた街を盛り上げてくれ」とのお達しが出た!
木の伐採もまだ終わっていない土地にアトラクションを建設しよう!
遊園地で体験できるスリル・感動・歓喜を上げて、お客さんを喜ばせてボーナスを勝ち取れ!
1か月(1ラウンド)3ワーカー×5か月しかないぞ!さあ急げ急げ!
主なメカニクス
ワーカープレイスメント | 共通ボード上にワーカーを置いてアクションする |
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タイル配置 | 個人ボードにタイルを配置する |
セットコレクション | 配置したタイルの種類によって得点を得られる |
ワーカープレイスメントによる建設ゲーム
個人ボード上に自分だけの遊園地を作り上げる建設ゲームです。
比較的シンプルなワーカープレイスメントと、ちょっとひねりのあるタイル配置の組み合わせで、箱庭建築をしていきます。
自分のラウンドでは、3つのワーカーをアクションスペースに置きます。
3ワーカー×5ラウンド=15手番でゲームが終了しますので、サクサク進みます。
ゲーム全体を見通して計画を立てていくというよりは、ラウンド毎に優位を取ることを目指しつつ、5つのラウンドの積み重ねで勝ちにもっていくゲームです。戦略性よりも戦術性が強いと感じます。
突貫工事のため、個人ボード上にはまだ木が生えている状態でスタートします。この木をよけながら、うまくタイルを配置しなければなりません。
これがいいアクセントが効いています。ああ、木、邪魔!というままならない中で、テンペニー市長のミッションが始まるのです。
アトラクションは6種類(うち1種類はお土産カテゴリー)あり、どれも豪快な設定とイラストが魅力です。
明らかに来場者の安全保障は後回しにされている模様(爆)。
マンモス(リアル)に乗るのって、アトラクション・・・なのか?
メインアクション:アトラクション建設
一番重要なアトラクションの建設アクションマスは1人しか入れないため取り合いです。
中央の目立つメリーゴーランドのカルーセルは回転することができ、各アトラクションの購入額を+2~-2と増減させます。
欲しいアトラクションを選び、まだ誰もワーカーを置いていなければ、ワーカーを置き・・・
対応するタイルを取って・・・。
個人ボード上に配置します。
配置ルールは「ブロックス」と同じで、点は接してもいいが辺はダメ、というものです。ちょい独特。スペースが結構できちゃうのが悩ましい。
ボード上のアイコンを覆うと、ボーナスがもらえます。
感情表のレース
配置したアトラクションはゲーム終了時にVPがもらえるのですが、それ以外にも「感情表」を動かすことができて・・・。
感情表は「スリル」「感動」「歓喜」の3つがあり、アトラクションや売店などのタイルを置いたり、個人ボード上のアイコンを覆うことで進められます。
例えばこのアトラクションを建設したら、「スリル」と「感動」が+1です。
感情表ボーナス
毎ラウンド、各トラックで1位の人がもらえるボーナスがなかなか強力。
次ラウンドで4人目のワーカーが使える!!!
次ラウンドのスタートプレイヤーになれる!(ついでにアトラクションの購入額を操作できる!!!)
お金がかつかつなこのゲームで喉から手が出るほど欲しい3金がもらえる!!!
ゲーム終了時までに一定以上感情表を進めていると、各トラックごとに5VPがもらえて、これも結構大きい。
5ラウンドを通じて、いかに感情表で優位に立つか? またボーナスをもらえる位置まで進めるか? が焦点。感情表の競争が、ゲーム全体をかなりコントロールします。
アトラクションの宣伝費でVP獲得
アトラクション自体のVPは、実はそこまで高くありません。
その代わり、アトラクションには「宣伝費を支払うとVPを獲得できる」という機能があります。
宣伝費は毎ラウンド「広告フェイズ」で支払うことができます。これにより、アトラクションから大量のVPを獲得できるチャンスがあります。
ただし、このゲームは常にお金が不足気味です。
どこまで宣伝費につぎ込むか? は毎回ジレンマとなります。
フリーで入れるサブアクションマス
メインのアトラクション建設と異なり、サブアクションマスは何人でも何回でも入れます。
そのため、比較的自由度は高め。サブアクションを使って、メインのアトラクション建設の準備をしていくというイメージですね。
ボード上に1マスの売店タイルを置ける売店業者。収入アップや感情表アップの効果。強い
個人ボード上から木を取り除ける樹木医
個人ボードを拡張できる
即座に2金もらえる
アクションとテーマが結びついているため、理解しやすく、すぐ飲み込めると思います。
基本、売店が強い。
勝利条件
VPは感情表ボーナスや宣伝費など、ゲーム中に入ってくるものと、ゲーム終了時に持っていたアトラクション自体のVP、アトラクション数によるボーナス、感情表のボーナス、隠し目標によるVPなどを合算して、一番多かった人が勝ちです。
1VPであっても、結構ちょこまかと入ってくる小さなVPを大切にしていると、勝ちにつながったりします。
感想
テーマ・フレーバー
これよこれ! ボドゲはこれよ!
ワクワクを机に広げる「ボドゲ感」がとにかくいい。
「遊園地づくり」というなんともワクワクするテーマが最&高です!
毎回、中央のメリーゴーランドのカルーセルをセッティングするたびに、気持ちがグンと盛り上がります。セッティングした時点で勝ち。
ユニークなアトラクションのぶっ飛んだデザインのおかげで、宇宙規模のスリル! 感動! 歓喜! を自分の箱庭に詰め込んでいくような楽しさ。
まだ木も伐採してないところからのスタートなのに、アトラクションだけで言えばディ〇ニーやU〇Jレベルの壮大さ(?)を疑似体験させてくれます。
アートワーク・コンポーネント
イラストは「エルドラドを探して」と同じ、ヴィンセント・デュトレ氏で、色彩豊かなアートワークが抜群に良い!
非日常のドアを開けるような色遣いがたまりません、ほんと。
コンポーネントも最高。所持ボドゲの中でも最高。
海外のレビューでも、口を揃えて絶賛されています。
アトラクションタイルから金トークンまでボール紙が分厚くしっかりしていてめちゃいい。コンポーネントを触りたいがためにプレイするまである(爆)。
プレイ感
アトラクションを取り合う「ワーカープレイスメント」、個人ボードでの「タイル配置」という割とシンプルなメカニクスを中心としていますが、「感情表のトラック競争」が良いスパイスになって全体をよくまとめています。
個人ボードで行うタイル配置のパズルは、角同士しか接してはいけないルールのおかげでジレンマたっぷり。さっきの自分の手番を悔やみつつ「アトラクションは近くに建てても危険だしねー」と言い訳するシーンも多いでしょう。
一方で、ワカプレによるアトラクションの取り合いに購入コストの増減システムが相まって「あー、それほしかったのに・・・じゃこっち取るか」「うわー+2されて高くなってるから1金足りない! 買えない!」など押し合いへし合い。狭ぇ!
感情表のレースも「このラウンドでは絶対4人目のワーカーほしい! 『スリル』上げまくる!」「しょうがないからここは譲って、次に備えるか・・・でも金欲しいから『歓喜』はもらっておく!」といった具合に熾烈。
当然、全部は一度にできないから、ここは死守してここは捨てる、といった取捨選択が必要になる。
良い具合に盤面全体が干渉しあっているため、複数の要素に目を配らせながらゲームを進めていくのが楽しいです。
カツカツ感を楽しめる人向き
3ワーカーで5ラウンドと、ともかく時間もお金も場所も足りない。
その足りなさの中でせわしなくラウンドが過ぎていく様が「5カ月でテーマパークを作れ」というフレーバーを実によく再現してて、自分は大変好きです。
ただし、遊園地! アトラクション! というワクワク感とは裏腹に、意外とシビアでタイトなゲーム展開になります。
拡大再生産要素は、収入量や個人ボードの拡張くらい。あとはわりとずっとカツカツです。そのカツカツを、感情表ボーナスでいかに緩和して優位に立つか、ですね。
今のところ、初心者にはやや不向きかも?という印象。
時間もお金も場所も足りず、カツカツな中で「全然やりたいことできない → その中でもベターな選択はどれ?」を見極めながらのプレイになるので、ボドゲに慣れていない方にとってはストレスに感じやすいかも? 実際、ボドゲ慣れしていない私の妻にも不評でした。そのような方には、アクションがインフレしていく拡大再生産型のゲームの方が、おすすめかなと思います。
とはいっても5ラウンド、15手番です。それほど長引かず終わるためずっとキツイ訳ではありません。ベストが封じられる中でベターな選択を取るのを楽しめる人、重いゲームでも慣れている人にとっては、サクサク遊べる中量級という感じで遊びやすいと思います。
インタラクション
タイル配置系ゲームといえば「タイルの取り合い」くらいしかインタラクションがない、というゲームも割とありますが、テンペニーパークは感情表による競争がかなり良いインタラクション具合で、アツくなります。ゲーム中はいつも感情表に目を光らせている感じ。
それに加えて、ワカプレは当然アトラクションは取り合いで、人数が増えるほど良いのが残っていなくて泣きます。
とはいえ、何人でも入れるフリーマスがあるので、それなりに救済アクションがあるというイメージ。
ワカプレのインタラクションがきつすぎず、同時に箱庭系のソロ感を薄れさせる毎ラウンドのボーナス競争と、このインタラクション具合は、かなり好きな部類です。
リプレイ性
プレイヤーごとに異なる個人ボードの裏面が用意されていたり、アトラクションや売店はランダム配置で状況が変わるので、ゲームごとに異なるプレイ感になります。
また勝ち方については、アトラクションを大量に配置してボーナスVPを狙うか、それとも宣伝費を払いまくってVPを稼ぐか、感情表のゲーム終了時ボーナスを全部狙うか・・・といったいくつかの勝ち筋があり、「次はあれをやってみるか」という要素も盛り込まれています。
ただし、リプレイ性がめちゃくちゃ高い設計になっているかと言われると、そこまででもないかな? という感じ。
結構、場に合わせて最善手を考えていくという点で戦術性が高いので、戦略をものすごく深められるわけではありません。
上記に挙げた点に加えて、悩ましいけど比較的長すぎず遊べるプレイ時間、及びステキなアートワークの味わいを総合して、飽きずにプレイできる、って感じですね。
プレイ環境(対象/年齢・人数・時間)
対象/年齢
公称は14歳以上となっていますが、これは輸送上のコストを抑えるためといった理由の場合もあるようです。
実際には、10歳以上くらいかなと思います。思った以上に盤面のいろんなところに目を光らせる必要があるので、初心者や子どもには情報量が多いかなと思いました。
プレイ人数
1人~3人でプレイしましたが、3人がいいんじゃないかな・・・と思います。
感情表の3つのトラックが競争になるので、3人だと良い具合にバランスが取れています。4人はまだ未プレイですが、ボーナスを1つも取れないプレイヤーが必ず出てくるのでバランスはやや悪いかも。
プレイ時間
公称は45-75分。
私の体験だと、インスト込みで、2人で1時間越えくらい。
慣れれば2人でサクサク、公称通り45分くらいで終わると思います。1人当たり20分~25分くらいの計算でいいのではと。
インストは結構簡単です。あ、セットアップ面倒です(誉め言葉)。
気になるポイント
大好きなボドゲですが、そこどうよ? という気になった点も容赦なく挙げておきます。
売店アクションが・・・強い!
このゲーム、サブアクションの1つである「売店業者」がめちゃくちゃ強いです。
無料で収入を増やしたり、感情表をコントロールできたりするので、下手するとアトラクションをあまり建設しなくても、売店建てまくれば勝てちゃうこともあるくらいです。
というより、アトラクションの建設に比べて、売店の方がお金かからないし、場所も取らないし、ずっと効率が良い時があるのです。その他のサブアクションもやや弱いものがあり、結果として「やることなくなったら売店に群がる」といったシーンが何度も繰り返されがち。
遊園地づくりのゲームなのに、売店の方が強いってのは問題ですよ!
「すべては金」 by:テンペニー市長
このゲーム、リソースは金だけなので、すべてにおいて収入が大切。
ただし、収入を増やせる手段は少なく、常にカツカツです。
収入がカツカツなこと自体はゲームとして問題ありませんが、収入を得るアクションが必然的に強くなるため、序盤にそれに気づけないと最終的に取り返せない差が生まれることも。
インストの際には「お金大事だよ!」と伝えてあげましょう。
もっと工夫してよ隠し目標カード
終了時に達成できていたらVPがもらえる、隠し個人目標カードが存在します。
ゲーム開始時に個人目標カードを2枚保持した状態で始まります。
この個人目標カード、達成してももらえるのはわずか3VPと微妙で、努力と対価が釣り合ってません。
あまりVPもらえなくても、そんなカード配られたらある程度がんばって目指そうとするじゃないですか? でも、下手に達成しようとするとむしろ負けに近づいてしまうこともあるんですよね。これは、ゲームシステムがプレイヤーに方向付けを与えて、ミスリードしてしまっている問題だと思います。
ウイングスパンのボーナスカードのように、大量VPがもらえたり、段階的にVPが設定されていたら方向性も決めやすいので、ここは工夫してほしかったなと思いました。
隠し個人目標がより達成しがいのあるものになっていたら、リプレイ性もより高まると思いますね。
総評
評価 | 10/10 |
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最近ぞっこんにほれ込んでいるゲームNo.1です!
好み☆11、遊びやすさ☆9。
なんでしょう、バランスにややツッコミどころもあって、もっと洗練できるのでは? と思うところはいくつかある。
でもメカニズムの融合具合とかテンポ感とか、非常に光るものあるし、全体的にテーマと親和性のある作りがめちゃくちゃ好感度高い。好き。
テーマ自体は初心者でも入り込みやすいですが、プレイ感は意外とシビア。初心者と遊ぶ際には注意が必要かも。毎回出したくてたまらない! ですが、慎重になる自分がいます。大好きだからこそ、合わないタイミングで出して嫌いになってほしくないのよ・・・シクシク。
とはいえなにしろテーマが楽しいし、アクションもわかりやすいので、全然いろんな場面で出してもいいと思いますけどね?
プレイ時間の長いゲームに慣れている人なら「お、いいね、サクサク終わるね」と感じられるんじゃないかな~。
ブログ内で指摘した「気になった点」については、現在ハウスルールを導入して遊んでみていますが、意外といい感じ。そちらもまた記事にしようと思います。
ハウスルール導入すると、ますます思い入れが強くなっちゃって大変ですホント
テーマ好き、プレイ好き、手の加えどころがある「スキ」がある感じも、好き!
ぜひ機会があれば、私と一緒に遊んでください!
こんなゲームが好きな人におすすめ
- 「遊園地づくり」という世界観
- シンプルなワーカープレイスメント
- ちょっとひねりの効いたタイル配置
- 軽めな中量級
- カツカツな中で最善手を考えるゲーム
販売状況
スリーブ
テンペニーパークのスリーブは88mm×63mmです。100枚あれば十分足ります。